スギ花粉飛散期に呼吸困難で発症したトマトジュースによる口腔アレルギー症候群の1例
川本 仁1) 山肩 満徳1) 中島 英勝1) 神辺 真之1) 倉岡 敏彦2)
〒734-8551 広島市南区霞1-2-3 1)広島大学大学院医歯薬学総合研究科病態臨床検査医学 2)国家公務員等共済組合連合吉島病院
症例は42歳,男性.スギ花粉飛散期に呼吸困難を主訴に救急受診を繰り返していた.発症前にはトマトジュースを常飲していた.口腔,鼻粘膜腫脹あり.眼瞼結膜充血あり.喘鳴の聴取なし.アレルギー歴:スギ花粉症.1秒量4.02L,%予測1秒量124%,気道可逆性試験 陰性.CAP-RAST scoreトマト(4),スギ(3).トマトジュースによるチャレンジテスト 陽性.トマトジュースが発症に関与したことよりトマトジュースによるOral Allergy Syndrome:以下,OASと診断した.トマトとスギ花粉は共通抗原性を有し,本症例がスギ花粉飛散期に発症したことと関連があると考えられた.呼吸困難感はOASの症状である咽頭狭窄感を反映したものと考えられたが,OASでは喘鳴を呈する場合もあり,呼吸困難を主訴にする患者を診た場合にはOASも考慮に入れるべきものと考えられた.トマトジュースによるOASの報告はなく本症例が初めての報告である.
Received 平成14年8月9日
日呼吸会誌, 41(6): 397-401, 2003