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パクリタキセル投与との関連が示唆された薬剤性肺炎の1例
谷口 菜津子1) 品川 尚文1) 木下 一郎1) 南須原 康行1) 山崎 浩一1) 山口 悦郎1) 秋田 弘俊2) 西村 正治1)
〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目 1)北海道大学医学部第1内科 2)北海道大学大学院医学研究科腫瘍内科学分野
症例は79歳,女性.肺小細胞癌の再発に対し,カルボプラチン+エトポシドによる化学療法施行後,パクリタキセルによる化学療法を開始した.投与中,全身倦怠感と軽度の呼吸困難感の出現とともに,胸部レントゲン写真で両肺びまん性の肺野濃度上昇陰影が見られ,胸部CT検査にて気管支血管束の肥厚,小葉間隔壁の肥厚,淡い濃度上昇が認められ,気管支肺胞洗浄液所見ではリンパ球比率の上昇が見られた.悪性細胞は陰性で,結核やMycobacterium avium complex,サイトメガロウィルス,カリニ原虫についてのPCR検査も陰性であった.パクリタキセルによるdrug lymphocyte stimulation testは陰性であったが,パクリタキセルの投与中止で陰影の改善が見られ,同剤による薬剤性肺炎と診断した.プレドニゾロン内服治療を行ったところ,さらに自覚症状,画像所見,動脈血酸素分圧が改善した.パクリタキセルの副作用として,間質性肺炎が基礎疾患にない場合にも薬剤性肺炎を生ずる可能性があり注意が必要である.
Received 平成15年1月16日
日呼吸会誌, 42(2): 158-163, 2004