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日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 検索用
日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 全文PDF

書誌情報

症 例

若年男性に発症し急速に進行した肺原発多形癌の2例

明田 晶子1)  山田 玄1)  明田 克之1)  大西 哲郎1)  高橋 葉子1)  工藤 和実1)  田中 紳太郎1)  白鳥 正典1)  高橋 弘毅1)  渡辺 敦2)  佐藤 昌明3)  阿部 庄作1) 

〒060-8543 札幌市中央区南1条西16丁目 1)札幌医科大学第3内科 2)同 第2外科 3)同 病理学講座

要旨

肺原発多形癌の2例を経験した.症例1は44歳,男性.症状は乾性咳嗽,労作時呼吸困難.左上葉の腫瘤影と左胸水を認めた.腫瘍は限局性で左胸腔の半分程度を占めていたが,胸水細胞診がclass IIであったことからcT3 N0 M0 stage IIBと診断し左肺全摘術を試みた.しかし,手術所見で大動脈,肺動脈などに浸潤を認めたため腫瘍摘出とリンパ節サンプリングを行った.病理像で多形癌,pT4 N2 M0 stage IIIBと診断された.化学療法を行ったが効果は認めず局所での腫瘍の増大と癌性リンパ管症,癌性心膜炎により死亡した.症例2は34歳,男性.症状は発熱と全身倦怠感.左上葉に腫瘤影を認めた.cT3 N0 M0 stage IIBと診断し,左上葉切除術を予定した.術中迅速病理診断で大動脈への浸潤を認めず,左上葉過分葉が存在していたために,左上区域切除とリンパ節廓清術を施行した.病理像で多形癌,大動脈,周囲脂肪組織中に一部腫瘍組織の露出が存在したため,pT4 N0 M0 stage IIIBと診断された.縦隔に放射線療法を施行したが,骨盤腔内の転移性腫瘍で再発した.化学療法を行なったが効果は認められず癌性腹膜炎,胸膜炎を合併し死亡した.本腫瘍は術前診断に際して,隣接臓器への浸潤傾向が強い癌であることに留意すべきであるものと思われた.化学療法と放射線療法の効果が認められなかったことから現時点では外科治療が望ましいと考えるが,浸潤所見の疑われる症例では外科治療の適応は少ないため,外科療法の対象となるのは末梢型の小腫瘤影のみであろうと考えられた.

キーワード

多形癌  WHO分類 

Received 平成15年2月10日

日呼吸会誌, 42(2): 164-169, 2004

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