![全文PDF](img/ico_pdf_full.gif)
誘因のない成人に発症し,両肺野に多発結節影を認めた三尖弁感染性心内膜炎の1例
宮田 茂1) 北田 修1) 中村 仁1) 荒金 和美1) 栗林 康造1) 中込 隆之1) 奥窪 琢1) 竹中 乃里子1) 陣 祥子1) 長澤 奈美子1) 杉田 實2) 中野 孝司1)
〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 1)兵庫医科大学総合内科(呼吸器・RCU) 2)同 中央医療画像部門
症例は56歳女性.2001年5月,発熱,咳嗽,喀痰が出現し,精査加療のため2001年6月2日に入院した.白血球数11,700/μl,CRP 14.6 mg/dl,血沈1時間値129 mmと高値で,胸部X線とCT写真上両肺野に空洞を伴う多発結節影を認めた.胸骨左縁第4肋間で収縮期雑音を聴取し,経食道心エコーで三尖弁に約1.5×1.0 cmの疣贅を認め,動脈血血液培養では黄色ぶどう球菌が検出されたため感染性心内膜炎及び敗血症性肺塞栓症と診断した.アンピシリン・スルバクタムの投与にて症状改善し,炎症反応も陰性化した.三尖弁感染性心内膜炎は薬物乱用,アルコール中毒や心室中隔欠損症等の基礎心疾患に伴うものが大部分である.本症例のように明らかな誘因を持たない三尖弁感染性心内膜炎は極めて稀な症例と考え報告した.
Received 平成15年5月19日
日呼吸会誌, 42(2): 176-180, 2004