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末梢血可溶性インターロイキン2レセプター(sIL-2R)が著明高値を示した結核性胸膜炎の1例
藤原 裕矢1)2) 高橋 直嗣1)3) 古藤 洋1)3) 野上 裕子1)3) 横田 欣司1) 下田 照文1) 庄司 俊輔1) 西間 三馨1) 久保 千春2)
〒811-1394 福岡県福岡市南区屋形原4-39-1 1)国立療養所南福岡病院呼吸器科 2)九州大学大学院医学研究院心身医学 3)九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設
症例は56歳男性.左側胸水のために入院となった.胸水は滲出液でリンパ球優位,アデノシンデアミナーゼ濃度も113.3 U/Lと高値であり結核性胸膜炎が疑われたが,喀痰・胸水の抗酸菌塗抹検査・PCRでは菌を検出することはできなかった.胸腹部CTでは肺野病変を認めず,縦隔に単発性のリンパ節腫大,脾腫,腹水を認めた.血清可溶性インターロイキン(IL)-2受容体(sIL-2R)が8,460 U/mlと著明に高値であり,悪性リンパ腫との鑑別が必要と考えられた.胸腔鏡による胸膜生検と縦隔鏡による縦隔リンパ節生検を施行,抗酸菌を伴う肉芽腫性病変を検出し,結核性胸膜炎と診断した.抗結核薬の投与を行い,胸・腹水の改善とともにsIL-2Rも低下した.肺結核をはじめとする良性疾患においてもsIL-2Rが上昇することは知られているが,今回認められたような著明高値の報告はない.本症例は,必ずしも血液悪性疾患でなくともsIL-2Rの著明上昇が起こりうることを示すとともに,診断困難な胸膜炎例における鏡視下生検の有用性を改めて確認させるものである.
Received 平成15年8月18日
日呼吸会誌, 42(2): 191-194, 2004