
悪性胸膜中皮腫との鑑別を要した肺類上皮血管内皮腫の1例
柳 重久 坂元 昭裕 坪内 拡伸 今井 光一 今津 善史 三好 かほり 有村 保次 京樂 由佳 松元 信弘 芦谷 淳一 中里 雅光
〒889-1692 宮崎県宮崎郡清武町大字木原5200 宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野
症例は77歳女性.入院3カ月前より右側胸部痛と37度台の発熱が出現した.近医にて右胸水を指摘され,当科に入院した.胸部CTにて右胸水,右胸膜肥厚,両肺多発結節影を認めた.胸腔穿刺を施行したが原因が同定されず,診断目的に胸腔鏡下胸膜肺生検を施行した.HE染色にて,線維性に肥厚した壁側胸膜,臓側胸膜および肺実質に,多稜形ないし紡錘形を呈する腫瘍細胞が増生していた.未熟な血管腔形成や胞体内空胞を伴い,血管内増殖や肺胞腔内での乳頭状増生を認めた.免疫組織染色にて腫瘍細胞は第VIII因子関連抗原,CD31,CD34に陽性,Calretinin,WT-1は陰性であった.以上より肺類上皮血管内皮腫と診断した.肺類上皮血管内皮腫は悪性度の低い血管内皮由来の腫瘍で,稀な疾患である.胸膜肥厚を呈する症例にて悪性胸膜中皮腫と並び鑑別診断に含まれるべきである.
Received 平成21年8月20日
日呼吸会誌, 48(5): 385-390, 2010