
縦隔原発大細胞性神経内分泌癌の1例
能島 大輔 木浦 勝行 堀田 勝幸 瀧川 奈義夫 田端 雅弘 谷本 光音
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科血液・腫瘍・呼吸器内科学
症例は65歳の男性.健康診断の胸部X線で縦隔陰影の拡大を認め,縦隔腫瘍が疑われた.CTガイド下針生検施行後に,嘔吐,下肢の脱力,動揺性歩行が急速に進行し,頭部MRIにて,周囲にリング状の造影効果を伴う腫瘤を脳実質内に3カ所認めた.指鼻試験は不能で,pro-GRPの上昇を認めた.脳幹を圧迫する腫瘤が小脳に認められ,失調症状が急速に進行したため,小脳の腫瘍摘出術を施行.摘出標本から大細胞性神経内分泌癌(LCNEC)と診断された.術後に全身状態の改善がみられたため,残りの脳転移に対し全脳照射を行い,シスプラチンとイリノテカンによる全身化学療法を施行した.肺外原発LCNECでは,様々な臓器原発の報告がなされているが,縦隔原発は稀であり,治療により劇的に臨床症状が改善した症例であり報告した.
Received 平成21年10月29日
日呼吸会誌, 48(7): 506-510, 2010