卵巣癌によると思われるpulmonary tumor thrombotic microangiopathyの1剖検例
福井県立病院呼吸器内科
症例は59歳女性.全身倦怠感と呼吸困難を主訴として当院受診した.肺高血圧による低酸素血症と右心負荷を認めたが胸部造影CTでは肺動脈内血栓像を認めず,骨盤内に腫瘤性病変を認めた.急速に呼吸不全と右心不全が進行し入院5時間で心停止となった.剖検では卵巣および骨盤内リンパ節,腹部大動脈周囲リンパ節に腫瘍細胞を認めたが,他の部位には原発を思わせる病変を見出すことができず卵巣癌が最も疑わしいと診断した.肺内の小動脈,細動脈内に腫瘍塞栓,血管内膜の線維性肥厚,血栓の器質化と再疎通像を認め卵巣癌によるpulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)と診断した.肺高血圧症を伴っているのにもかかわらずCT検査でも肺動脈内欠損像を認めないときには,鑑別疾患としてPTTMも念頭に置く必要があると考えられる.
Received 25 Jul 2011 / Accepted 7 Dec 2011
連絡先:山口 航
〒910-0846 福井市四ッ井2-8-1
福井県立病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(3): 231-236, 2012