自然退縮がみられた肺多形癌の1例
村西 佑介a 上島 康生a 長谷川浩一b 塩津 伸介b 内匠千恵子b 平岡 範也b
a京都第一赤十字病院呼吸器外科
b同 呼吸器科
症例は65歳男性.2006年5月に胸部X線写真にて右上肺野に腫瘤影を認め,6月の胸部X線写真にて病変の増大を認めた.胸部コンピュータ断層写真(CT)にて右上葉S2に径45 mm大の腫瘤影を認め,肺癌の疑いにて7月下旬に当院を受診した.気管支鏡検査を施行したが確定診断に至らなかった.8月中旬の胸部CTで肺腫瘤影の縮小を認め,同月下旬にCTガイド下経皮穿刺細胞診を施行したところ肺非小細胞癌と診断された.臨床病期IA(T1N0M0)にて,9月中旬に胸腔鏡下右肺上葉切除および第2群の縦隔リンパ節隔清(ND2a)を施行した.切除標本の病理検査で肺多形癌と診断された.術後5年の現在,無再発で生存中である.悪性腫瘍の自然退縮はまれとされ,またこれまでは肺多形癌の自然退縮の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.
Received 14 Nov 2011 / Accepted 22 Feb 2012
連絡先:村西 佑介
〒605-0981 京都市東山区本町15-749
京都第一赤十字病院呼吸器外科
日呼吸誌, 1(6): 498-501, 2012