放射線肺臓炎との鑑別を要した乳癌のpulmonary tumor thrombotic microangiopathyの1剖検例
関 香織a 笠松 悠a 吉野谷清和a 角谷 昌俊a 廣中 愛b 山口 正秀b 川端 健二c 笠松 美宏a
a松下記念病院呼吸器科
b同 乳腺外科
c同 中央臨床検査部
症例は左乳癌術後stage IIIcに対して放射線化学療法施行後の58歳女性.治療終了半年後に乾性咳嗽が出現.近医で漢方薬を含む多数の鎮咳薬の処方を受けたが,労作時呼吸困難が続発し松下記念病院呼吸器科紹介受診.胸部CTで両側に淡い浸潤影,血液検査でKL-6の上昇も認めたため,漢方薬による薬剤性肺炎や放射線肺臓炎を疑いステロイド治療を開始した.2週間後も改善なく胸水が出現したため入院加療となり,穿刺によるセルブロック検体の免疫染色により乳癌再発と診断し抗癌剤治療を行った.一時症状の改善を認めたが,第41病日より亜急性に呼吸状態の悪化を呈し第42病日に死亡した.剖検では,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)の所見があり,肺臓炎の所見は認めなかった.放射線肺臓炎との鑑別に苦慮したPTTMの1剖検例を経験したので文献的考察をふまえ報告する.
KL-6 pulmonary tumor thrombotic microangiopathy 放射線肺臓炎 乳癌
Received 5 Dec 2011 / Accepted 15 Feb 2012
連絡先:関 香織
〒570-8540 大阪府守口市外島町5-55
松下記念病院呼吸器科
日呼吸誌, 1(6): 526-530, 2012