Topics 3 急性呼吸促迫症候群(ARDS)―画像と予後―
社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院呼吸器科
びまん性肺胞傷害(DAD)はARDSの病理組織像であり,傷害発生からの経過から,急性滲出期,亜急性増殖期,慢性線維化期の主に3期に分類されるが,肺野全体が均一な病期ではなく,空間的にも,時間的にも領域ごとの違いが認められる.発症早期からの増殖性病変の評価が今後の臨床治験の反応性予測に重要であることも近年報告されている.滲出早期は検出できないものの,高分解能CT(HRCT)所見は,DADの病理学的病期をよく反映している.滲出期は牽引性気管支拡張像を伴わない濃淡の濃度上昇域であり,牽引性細気管支・気管支拡張像の出現は増殖期への移行を示唆する.線維化期は,これらの牽引性気管支拡張像に加え,嚢胞性病変や容積減少の出現が認められる.ARDS診断時の,HRCT上の牽引性気管支拡張像を呈する濃度上昇域の広がりは,独立した予後因子であり,人工呼吸器離脱,人工呼吸器関連肺炎や圧外傷発生の予測因子でもある.
急性呼吸促迫症候群 びまん性肺胞傷害 高分解能CT 人工呼吸器関連肺損傷
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社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院呼吸器科
日呼吸誌, 2(5): 502-512, 2013