血栓形成により造影効果の減弱を認めた肺血管病変が胸腔内穿破した1例
奥本 穣a 山口 覚博a 櫛谷 桂b 岩本 博志a 岡田 守人c 服部 登a
a広島大学病院呼吸器内科
b広島大学大学院医系科学研究科病理学
c広島大学病院呼吸器外科
症例は36歳,女性.左肺上葉腫瘤影の経過観察中に血痰・左胸痛が出現し,CTで同腫瘤の胸腔内穿破が疑われたため,緊急手術を施行した.病変内に巨大血栓を認め,病理組織では動静脈成分の混在と嚢胞様に拡張した脈管の集簇を認めたが,動静脈の短絡は認めず,また造影CTで特徴的な流入動脈や流出静脈も同定できず,肺動静脈奇形とは断定できなかった.本症例は血栓形成により造影効果を欠いたにもかかわらず,胸腔内穿破による血胸をきたすという過去に報告のない経過をたどった肺血管病変の1例であった.
Received 18 Oct 2019 / Accepted 21 Apr 2020
山口 覚博
〒734–8551 広島県広島市南区霞1–2–3
広島大学病院呼吸器内科
日呼吸誌, 9(4): 299-303, 2020