食道内ポリカルボフィルカルシウム製剤による気管狭窄の1例
山根 宏美 清水ゆかり 川口 紘矢 丸山 広高 安道 誠 伊藤 清隆
熊本労災病院呼吸器内科
症例は93歳,女性.食後に喘鳴とSpO2低下を認め救急搬送された.胸部単純CTでは気管を取り囲む巨大縦隔腫瘍を認め,食道内異物が気管分岐部を圧排して高度狭窄をきたしていた.Ⅱ型呼吸不全は上部消化管内視鏡で食道異物を除去し改善した.異物はポリカルボフィルカルシウム(polycarbophil calcium)製剤と判断した.本剤はゲル状となり薬効を発揮するが,ブタ食道を用いて検証したところ,食道内では薬剤の形態を保ったまま膨化して粘膜に固着する可能性があることを確認し,気管狭窄の一因となったと思われた.注意喚起が必要と考え報告する.
Received 11 Mar 2020 / Accepted 18 May 2020
山根 宏美
〒866–8533 熊本県八代市竹原町1670
熊本労災病院呼吸器内科
日呼吸誌, 9(5): 350-354, 2020