簡易懸濁法によるアレクチニブの投与が長期生存につながったALK融合遺伝子陽性肺腺癌
才野 壽子a 佐藤明日香a 三好美似菜b 三登 峰代c 北原 良洋c,* 中野喜久雄c
a呉医療センター・中国がんセンター薬剤部
b市立東大阪医療センター薬剤部
c呉医療センター・中国がんセンター呼吸器内科
*現所属:広島市立舟入市民病院内科
症例は52歳男性.多発脳転移を伴う肺腺癌Stage ⅣBに対し全脳照射とシスプラチン(cisplatin:CDDP)+ペメトレキセド(pemetrexed:PEM)の化学療法を施行したが,全身痙攣により意識レベルとperformance status(PS)の悪化(1→4)を認め,嚥下困難となった.ALK融合遺伝子陽性が判明し簡易懸濁法によりアレクチニブ(alectinib)を経鼻胃管から投与した.原発巣と脳転移の縮小,意識レベルとPSの改善(4→1),嚥下機能の改善を認めた.無増悪生存期間は3年2ヶ月で,アレクチニブの内服治療を5年8月間継続できた.現在ロルラチニブ(lorlatinib)で治療継続中である.
嚥下困難 ALK融合遺伝子 簡易懸濁法 アレクチニブ 経鼻胃管
Received 7 Apr 2023 / Accepted 31 Jul 2023
北原 良洋
〒730–0844 広島県広島市中区舟入幸町14–11*
呉医療センター・中国がんセンター薬剤部
*現所属:広島市立舟入市民病院内科
日呼吸誌, 12(6): 307-313, 2023