気管支動脈起始異常を認め,喀血で発見された成人の右気管気管支の1例
姜 臣鎬* 前田 均* 八幡 知之* 河島 哲也** 高田 輝雄** 大西 一男** 足立 和彦**
〒651-0053 神戸市中央区籠池通4丁目1-23 神戸労災病院 *同 呼吸器内科 **同 内科
症例は63歳女性.1998年6月12日に喀血を生じ,精査目的のため6月18日当院入院.右上肺にすりガラス状陰影を認め,気管支ファイバースコピーを施行したところ,気管分岐部の頭側約1cmの気管に気管気管支入口部を認め,同部に血線を認めた.気管支動脈造影では,右気管支動脈は通常の位置になく,右腕頭動脈の分枝であるThyrocervic arteryから分岐した血管により気管気管支の領域は支配されていた.また,この気管支動脈の末梢では肺動脈とシャントを形成し,さらに非定型抗酸菌感染も加わっており,気管気管支の感染防御能の低下による炎症性変化が喀血の原因と考えられた.また本例では気管気管支の存在とそこへの気管支動脈の血行支配も同時に観察することができた.ヒツジなどで正常に認められる気管気管支の血行支配と非常によく似ており,ヒトの気管気管支は先祖返りによって生じる可能性を考察できた興味深い症例と考えた.
喀血 気管支動脈起始異常 先祖返り 非定型抗酸菌症 右気管気管支
Received 平成11年5月12日
日呼吸会誌, 38(1): 30-33, 2000