肺門リンパ節のみに癌病巣を認めた原発不明扁平上皮癌の1例
金子 和彦 矢満田 健 羽生田 正行 宮澤 正久 花岡 孝臣 近藤 竜一 牧内 明子 天野 純
〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1 信州大学第2外科
肺門リンパ節のみに癌病巣を認めた稀な症例を経験した.症例は63歳の男性で胸部X線,CT,MRIにて右肺門に3.5cm大のリンパ節腫大が認められた.経気管支鏡的穿刺吸引細胞診でも確定診断が得られなかったため,開胸生検を施行したところ低分化扁平上皮癌と診断された.このため右肺摘除術および縦隔リンパ節郭清を施行した.摘出肺をはじめ全身検索を行なったが原発巣と考えられる癌病巣を認めず,T0N1M0扁平上皮癌と考えられた.本症例は術後6年4カ月経過した現在,再発なく健在である.原発不明癌は一般的にその予後は不良とされているが,T0肺癌と考えられる症例では病変リンパ節の摘出および縦隔郭清が十分に施行されれば,比較的良好な予後が期待できる症例もあると考えられる.
Received 平成11年5月31日
日呼吸会誌, 38(1): 39-44, 2000