胸腔内迷走神経に発生した神経線維腫の1例
干野 英明1)3)* 大渕 俊朗2) 左近 織江1)3) 鈴木 郷1)3) 重原 克則4) 高畠 博嗣1) 藤田 昭久1) 田垣 茂1) 関根 球一郎1) 阿部 庄作3)
1)北海道恵愛会南一条病院呼吸器内科 2)北海道恵愛会南一条病院呼吸器外科 〒060-0061 札幌市中央区南1条西13丁目 3)札幌医科大学第3内科 4)結核予防会北海道支部 *現 新日鐵室蘭総合病院呼吸器科
左胸腔内迷走神経に発生した神経線維腫の一例を経験した.症例は20歳男性.学校検診で胸部X線写真上,左上縦隔に異常影を指摘された.CT,MRIにて縦隔腫瘍を疑われ胸腔鏡下手術を施行した.腫瘍は反回神経分岐部より中枢側の左迷走神経幹から発生しており,上下の迷走神経を切断し腫瘍を摘出した.病理組織像より良性の神経線維腫と診断した.迷走神経由来の神経原性腫瘍は比較的稀で,本邦では過去に約60例報告されているが,その大部分は神経鞘腫である.また神経線維腫はほとんどがレックリングハウゼン病を合併しており,自験例のように合併のない例は本邦では極めて稀であり報告する.
Received 平成11年6月15日
日呼吸会誌, 38(1): 54-58, 2000