約12年間経過観察し複種類(3種類)の感染をみた非結核性抗酸菌症の1例
児玉 裕三 植木 純 高橋 英気 蓮沼 紀一 檀原 高 熊坂 利夫* 植草 利公** 福地 義之助
〒113-0033 東京都文京区本郷2-1-1 順天堂大学呼吸器内科 *同 第1病理学 〒211-0021 神奈川県川崎市中原区木月住吉町2035 **関東労災病院病理科
症例は79歳女性.55歳頃から咳,痰,血痰を自覚し,67歳時症状の増悪と呼吸困難が加わり当院に入院した.胸部X線上両側肺野に索状,粒状影が散在し,喀痰培養でMycobacterium avium complexが200~500コロニー検出され非結核性抗酸菌症と診断した.その後右上葉に空洞性陰影が出現し排菌量も増加したため,69歳時から抗結核薬投与を開始した.治療後空洞影は消失したが,その後は症状の寛解・増悪を反復し喀痰中にM. fortuitumやM. chelonaeも検出された.画像変化に比し肺機能は比較的保たれており,日常生活は年齢相応に保たれていた.79歳時進行胃癌が発見され,平成9年5月死亡.剖検では肉眼的に上葉を中心に多数の嚢胞性気管支拡張性変化,誘導気管支壁の肥厚,顕微鏡所見では気管支壁の一部に肉芽腫を認めたが,全体として本症に特徴的とされる病理所見は乏しかった.本症例での3種類の非結核性抗酸菌感染を認め12年間にわたる画像,肺機能を中心とした臨床経過と病理所見との対比は本症の臨床的対応をとるうえで貴重な症例と考え報告した.
非結核性抗酸菌症 嚢胞状気管支拡張症 Mycobacterium fortuitum Mycobacterium chelonae
Received 平成11年7月5日
日呼吸会誌, 38(1): 67-72, 2000