慢性肺気腫患者のエネルギー代謝
夫 彰啓 米田 尚弘 吉川 雅則 竹中 英昭 徳山 猛 塚口 勝彦 山本 智生 成田 亘啓 友田 恒一* 長 澄人*
〒634-0813 奈良県橿原市四条町840番地 奈良県立医科大学第2内科 *済生会吹田病院呼吸器内科
外来肺気腫患者21例(患者群)を対象とし,安静時消費エネルギー量の測定を行い,年齢を合わせた健常成人14例(コントロール群)と比較した.また,患者をその%理想体重(%ideal body weight;%IBW)を基準として低体重群(%IBW<90,14例)と正常体重群(%IBW≧90,7例)とに区別して測定値を比較した.その結果,(1)コントロール群に比して患者群では代謝亢進を認めた.(2)患者群における体重減少の有無による比較では,肺機能検査値では両群に有意差を認めないが,患者低体重群で有意の代謝亢進を認めた.(3)患者正常体重群でもコントロール群より有意に代謝が亢進していた.(4)患者群では代謝状態と肺機能検査上の換気能力・過膨張所見・肺拡散能力との間に有意な相関が認められた.以上の結果から,肺気腫患者の代謝亢進は明らかで,それが肺機能の増悪と関連しながら,患者の栄養障害進展と密接に結び付いている可能性が示唆された.
Received 平成8年12月19日
日呼吸会誌, 36(1): 10-17, 1998