良性石綿胸水の臨床的検討
岸本 卓巳 岡原 正幸 近森 研一 小崎 晋司 青江 啓介 大家 政志 藤岡 英樹 木村 和陽 米井 敏郎
〒702-8055 岡山市築港緑町1丁目10番25号 岡山労災病院内科
良性石綿胸水症例17例は全例男性で,60歳以上が13例と高齢者が多かった.15例は胸痛,呼吸困難の自覚症状で発症していたが,2例は無症状であった.胸水は右側に貯留した例が15例(両側性の4例を含む)と圧倒的に多く,再発例は6例,5回繰り返した例が1例あった.職業歴では10例が造船業,5例が建設業にて石綿曝露を受けており,曝露期間が30年以上また初回曝露から30年以上を経て発症した例が多い.合併症としてびまん性胸膜肥厚斑を来した症例が6例で,そのうち1例は呼吸不全を来した.また,悪性腫瘍を合併した症例が2例あった.胸水の性状では17例中14例が血性で浸出液,細胞成分ではリンパ球が優位であった.ヒアルロン酸は平均29.5μg/mlで,悪性胸膜中皮腫に比較して,有意(p〈0.05)に低値を示した.末梢血白血球数が10,000/mm3以上血清CRPが10mg/ml以上を示した症例もあったが,大半はCRPは弱陽性に留まっていた.
良性石綿胸水 石綿曝露 びまん性胸膜肥厚斑 円形無気肺 ヒアルロン酸
Received 平成9年4月16日
日呼吸会誌, 36(1): 18-22, 1998