胸腔鏡を用いた急性膿胸の治療
〒227-8501 横浜市青葉区藤が丘1-30 昭和大学藤が丘病院胸部心臓血管外科
急性膿胸の治療では感染症の治療とともに肺の再膨張,治療期間の短縮が問題になる.われわれはこの観点から胸腔ドレナージ,抗菌剤で改善しない線維素膿性期の10例に胸腔鏡を用いた治療を行った.症例は男性8例,女性2例で年齢は43~73歳であった.術前病悩期間は15日から約2カ月であった.胸腔鏡操作は肺炎を併発した症例を除いて全身麻酔下に行った.通常,トラカールを2本挿入し,胸腔の膿,膿苔,線維膜を排除した.最後にドレーンを2本留置して原則的に術後も胸腔洗浄を行った.胸腔鏡所見から線維素膿性期を膿性期,線維素期,膿性被膜期に分類できた.1例に膿の再貯留を認めたため再度ドレナージを行ったが,本手技による重篤な合併症・死亡例はなかった.術後平均33日目に退院した.術後8カ月から4年11カ月経過している現在,再発例はない.動脈血ガス値は改善し,患側肺の再膨張は良好である.
Received 平成9年7月14日
日呼吸会誌, 36(1): 61-66, 1998