血痰,気胸の原因として肺梗塞,肺血管炎が疑われたSLEの1例
西辻 雅1) 中村 裕行1) 斎藤 勝彦2) 藤村 政樹3) 松田 保3)
〒939-8075 富山県富山市今泉292 富山市立富山市民病院呼吸器内科 1)富山市立病院呼吸器内科 2)同 病理科 3)金沢大学医学部付属病院第3内科
23歳男性が発熱,血痰,右側胸部違和感および左下肢腫脹を主訴に平成8年6月10日当科を受診した.平成8年6月上旬より,38℃前後の発熱と血痰,右側胸部違和感を認めるようになった.当科受診時の胸部X線写真にて両側胸水と両側下肺野の斑状影を認め,また検尿にて蛋白尿と血尿を認めた.抗核抗体が2,560倍,抗DNA抗体が90倍,anti-dsDNA IgGが31.8U/mlと高値でありSLEと診断された.肺血流スキャン上の血流欠損,TBLBからの肺胞腔内への出血より肺梗塞の合併が疑われ,またTBLBより肺血管炎の所見が得られた.血痰はステロイド投与中に速やかに消失し,血痰は主として肺血管炎によるものと考えられた.さらに経渦中気胸を発症し,その原因として肺血管炎と胸膜を巻き込む形での梗塞壊死が考えられた.
Received 平成9年4月22日
日呼吸会誌, 36(1): 71-76, 1998