心タンポナーデ症状を呈しない心嚢液貯留が発見の契機となった原発性肺癌の一例
大家 政志1) 山鳥 一郎2) 譲尾 昌太1) 青江 啓介1) 小崎 晋司1) 木村 和陽1) 米井 敏郎1) 岸本 卓巳1)
〒702-8055 岡山市築港緑町1丁目10-25 1)岡山労災病院内科 2)同 臨床検査科
症例は73歳女性.高血圧,高脂血症で外来通院中であったが平成5年11月より乾性咳嗽が出現,胸部レントゲン写真で心拡大,心エコーで心嚢液の貯留を認めた.しかし,心タンポナーデ症状は皆無で,心エコー上でも心嚢液の増加がなかったため経過観察を行った.乾性咳嗽が消失しなかったため,3ヶ月後に確定診断目的で心膜切開術を施行したところ病理学的に癌性心膜炎であると診断された.原因精査のため行った気管支鏡検査で気管・気管支表層進展型の原発性肺癌と診断された.癌性心膜炎で発症する肺癌は比較的まれであるが,心タンポナーデ症状を呈さない症例報告は本症例が最初と思われるので報告する.
Received 平成9年4月22日
日呼吸会誌, 36(1): 77-80, 1998