経皮的嚢胞ドレナージにより軽快した結核菌による感染性肺嚢胞の1例
柳瀬 賢次 中村 美加栄 豊田 高彰 土手 邦夫 角南 明 若原 建二 久岡 直子 鹿内 健吉 丸山 繁* 波多野 好美*
〒433-8105 浜松市三方原町3453 聖隷三方原病院呼吸器センター内科 同 アレルギー科*
症例は63歳の男性,微熱・乾性咳嗽を主訴に入院.胸部X線写真で左上肺野に,周囲に浸潤影を伴う嚢胞があり内部に鏡面形成を認めた.喀痰,気管支肺胞洗浄液の細菌学的検索では菌陰性であったので,菌同定の目的で透視下に左肺の嚢胞穿刺を施行した.穿刺液の抗酸菌塗抹は陰性であったが,ADAが79.6IU/Lと高値で,その他の臨床所見と合わせ肺嚢胞への結核菌感染を強く疑い抗結核薬による治療を開始した(後に穿刺液より結核菌が培養され,すべての抗結核薬に感性であった).その後3カ月の経過で嚢胞内容液は徐々に増加し,嚢胞内腔全体を占拠するに至り,再度嚢胞穿刺を施行した.穿刺液の抗酸菌塗抹はGaffky7号相当(培養陽性)であった.抗結核薬の全身投与では効果に限界があると判断し,経皮的嚢胞ドレナージと抗結核薬の直接嚢胞内注入を行った結果,内容液は次第に消失し,嚢胞は縮小した.結核菌による感染性肺嚢胞で化学療法に抵抗して悪化する場合,経皮的嚢胞ドレナージは考慮すべき治療手段であると考えられた.
Received 平成9年5月1日
日呼吸会誌, 36(1): 81-85, 1998