胸膜播種に対し胸膜摘除術を施行した胸腺腫の1生存例
小原 真紀1) 佐藤 浩昭1) 大塚 盛男1) 石川 成美2) 石川 博一1) 藤原 正親3) 菅間 博3) 長谷川 鎭雄1)
〒305-0006 つくば市天王台1-1-1 1)筑波大学臨床医学系呼吸器内科 2)同 臨床医学系胸部外科 3)同 基礎医学系病理
症例は46歳女性.前胸部痛を主訴に入院.胸部X線及びCTで前縦隔の腫瘤および左胸膜播種所見を認めた.経皮生検により胸腺腫と診断.治療前の抗アセチルコリンレセプター抗体は30.3pmol/mlと高値を示したが,重症筋無力症は認められなかった.開胸時,播種は壁側胸膜にのみ認められたため胸腺全摘,左肺上葉合併切除及び壁側胸膜摘除術を施行した.術後1カ月経過時に重症筋無力症を発症.抗コリンエステラーゼ剤投与にて寛快後,縦隔に放射線を照射した.抗アセチルコリンレセプター抗体は正常値を超える値で推移しているが,術後5年以上再発を認めていない.稀少例と考え報告した.
Received 平成9年6月11日
日呼吸会誌, 36(1): 95-99, 1998