喘息様症状で発見されステントの逆λ型留置が有効であった腺様嚢胞癌の1例
竹中 英昭1)2) 長 澄人1) 生駒 行拡2) 成田 亘啓2) 西山 勝彦3) 尾辻 秀章4) 居出 弘一5) 前田 宗宏5) 打田 日出夫5)
〒564-0026 吹田市高浜町6-39 1)済生会吹田病院呼吸器内科 2)奈良県立医科大学第2内科 3)済生会吹田病院胸部外科 4)済生会吹田病院放射線科 5)奈良県立医科大学放射線科
症例は66歳,男性,喘息様症状を主訴に当科を受診,精査のため入院した.胸部聴診で吸気終末にwheezeを聴取し,呼吸機能検査で1秒量とピークフローとの低下を認めた.胸部単純撮影では明らかな異常は認められなかったが,断層撮影では気管分岐部直上の気管下部に径約1cmの腫瘤陰影を認め,胸部CTでは気管下部から両側主気管支に不整な壁肥厚があり,気管下部膜様部から腔内に突出する腫瘤が認められた.気管支鏡検査では気管下部は腫瘍でほぼ閉塞されており,同部の生検で腺様嚢胞癌の診断を得た.気管支鏡検査後腫瘍による窒息状態となったため,緊急挿管し気道確保を行い,後日気管下部から右主気管支にスパイラルZステントを留置したうえで,さらにステントのワイヤー間隙を通して左主気管支にもう1本スパイラルZステントを留置し,逆λ型ステント留置をおこない抜管した.その後放射線療法を行い退院,外来で経過観察中である.
腺様嚢胞癌 気管狭窄 連続性ラ音 フローボリューム曲線 Z-ステント
Received 平成9年7月30日
日呼吸会誌, 36(1): 106-110, 1998