メチルフェニデート静注後に発症した肺タルク肉芽腫症の1例
中野 寛行1) 岩田 康2) 鐘ヶ江 秀明3) 大島 司3) 相澤 久道1) 原 信之1)
〒812-0054 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学医学部附属病院胸部疾患研究施設 2)〒806-0034 北九州市八幡西区岸の浦2-1-1 九州厚生年金病院 病理 3)同 内科
症例は57歳男性.昭和40年より約3年間メチルフェニデートの静注歴があった.昭和60年に発熱,乾性咳嗽にて入院し,両側中下肺野の粒状陰影と塊状陰影を伴う肉芽腫性肺炎と診断されたが,原因は不明であった.対症療法で症状は軽快したが,その後外来通院は中断された.平成5年症状の増悪を自覚し再入院した.粒状陰影の拡大と共に塊状陰影の増大が認められた.経気管支肺生検を施行し,透明結晶性異物を伴う肉芽腫性病変と判明した.さらに分析電顕より異物はマグネシウムと珪素からなり,多くの薬剤の基剤であるタルクで矛盾がないと思われた.薬物使用歴と合わせてメチルフェニデート静注による肺タルク肉芽腫症と確定診断した.対症療法で自覚症状,動脈血酸素分圧の改善がみられ,退院後も安定した状態で推移している.
Received 平成9年8月11日
日呼吸会誌, 36(1): 111-115, 1998