肺胞出血を呈したANCA陰性全身型Wegener肉芽腫症の2例
土生 康雅 赤松 啓一郎 山縣 優子 山縣 俊之 池田 剛司 前田 孝夫 湯川 進
〒640-8156 和歌山市七番丁27番地 和歌山県立医科大学第3内科
症例1は70歳,女性,症例2は27歳,女性.共に副鼻腔炎症状で発症し,その後腎病変および肺胞出血を併発した.2例とも鼻粘膜生検でWegener肉芽腫症と診断されたが,抗好中球細胞質抗体(ANCA)は陰性であった.症例1は,サイクロフォスファマイドとステロイドの併用療法,症例2はステロイドのパルス療法を施行して,肺胞出血はコントロールされ,その他の臨床所見,及び検査所見の著明な改善を得た.肺胞出血を伴う全身型Wegener肉芽腫症の予後は極めて不良であり,これまでの報告では救命例はほとんどない.ANCA陰性のWegener肉芽腫症は,重症の全身型であっても比較的治療に対して反応があり,予後的に良好である可能性が示唆された.
Received 平成8年10月11日
日呼吸会誌, 36(2): 157-163, 1998