PTHrP産生による高カルシウム血症を遺伝子レベルで確認した大細胞肺癌の1剖検例
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症例は41歳の女性,臨床病期IV期(T4N0M1)で発症した.当初は高カルシウム(高Ca)血症を呈さず,3年後の腫瘍量が著明に増加したT4N3M1状態で症状を有する高Ca血症が初発した.高Ca血症の成因を精査した結果,血中PTHrP-N端活性(1―34)は上昇しPTH intactと1,25(OH)2D3が抑制されていたため腫瘍によるPTHrP産生と考えた.この確認のため剖検を施行すると肺原発巣と縦隔リンパ節の組織内PTHrP-N端活性はそれぞれ1.2 ng/g wet weight,165.6 ng/g wet weightであるが,正常肺組織では検出されなかった.抗PTHrP抗体を用いた免疫組織染色では腫瘍細胞内にPTHrPが濃染された.肺原発巣の抽出液を用いたNorthern blot法でPTHrPのmessenger RNAが検出された.以上より高Caが癌組織によるPTHrP産生によることを証明した.肺大細胞癌で遺伝子レベルでの高Ca血症の原因分析は現在まで例がないため報告した.
肺大細胞癌 高カルシウム血症 PTHrP ノーザンブロット法 免疫組織化学
Received 平成9年6月19日
日呼吸会誌, 36(2): 203-207, 1998