豚蛔虫が原因と考えられたPIE症候群の1例
松山 航1) 溝口 亮1) 岩見 文行1) 川畑 政治2) 納 光弘2)
〒899-5241 鹿児島県姶良郡加治木町木田1882 1)国立療養所南九州病院呼吸器内科 2)鹿児島大学医学部第3内科
症例は46歳男性.有機栽培野菜をよく食べていた.平成7年6月より下痢出現.8月より乾性咳漱出現し当院入院.白血球1,5400/ul(好酸球58%),IgE3,259mg/dlと上昇,胸部CTで両側肺野のびまん性の粒状影を認めた.BALFにて細胞数5.9×105/ml,好酸球58.1%,リンパ球13.2%,肺胞マクロファージ23.7%と好酸球の増加を認めた.精査にて薬物,真菌,膠原病等は否定され,血中の豚蛔虫に対する抗体が陽性であったためイベルメクチン12mgの単回投与を行った.投与後数日で下痢は消失,12月には乾性咳漱と胸部異常陰影の消失をみた.本症例は虫卵,虫体ともに確認できなかったが臨床経過,血清学的検査結果より豚蛔虫によるPIE症候群と考えた.寄生虫感染症は戦後減少していったが近年海外旅行や自然食ブーム等に伴い呼吸器疾患においても増加,多様化の傾向を示している.本症例は感染の原因が自然食と考えられ社会的にも重要と考え報告する.
豚蛔虫 PIE症候群 人畜共通寄生虫感染症 ELISA オクタロニー法
Received 平成9年6月20日
日呼吸会誌, 36(2): 208-212, 1998