瘻壁が菲薄化していた末梢性肺動静脈瘻の1手術例―肺動静脈瘻の治療方針について―
稲葉 浩久1) 太田 伸一郎1) 西村 俊彦1) 高持 一矢1) 石田 格1) 江藤 尚2) 本多 淳郎2) 室 博之3) 長島 康之4)
〒420-0881 静岡市北安東4-27-1 1)静岡県立総合病院呼吸器外科 2)同 呼吸器科 3)同 病理検査科 〒420-0911 静岡市瀬名4629-1 4)瀬名病院呼吸器外科
症例は19歳,女性.数年前より労作時の呼吸困難を自覚.今回,他病観察中に左胸部異常陰影を指摘され,当院受診.チアノーゼ,バチ指,赤血球増多症,低酸素血症を認めた.肺動脈造影検査を含む画像検査で,拡張し蛇行したA10,V10とそれに連続する末梢性の嚢状組織を認め,肺動静脈瘻と診断した.右→左シャント率は17%.治療としては,右肺S10の部分切除を選択したが,瘻壁は非常に薄く,易破裂性と考えられた.術後,自他覚症状とも軽快した.当患者の妹も繰り返す鼻出血及び肺動静脈瘻を認め,Rendu-Osler-Weber病と診断し,肺動静脈瘻の切除術を施行した.肺動静脈瘻の重篤な合併症の1つに,瘻破裂に伴う血胸や喀血がある.破裂を回避するためには,病巣の外科的切除が最も確実な治療法である.表在性の肺動静脈瘻は手術が第1選択であり,深在性の肺動静脈瘻も機能的に許す限り手術の適応とすることが望ましい.
Received 平成9年7月14日
日呼吸会誌, 36(2): 213-216, 1998