肺癌における末梢血幹細胞至適採取時期の指標についての検討
坂尾 直子1) 大道 和宏1) 有田 健一1) 杉原 基弘1) 坂本 直子1) 石井 尚子2)
〒730-0052 広島市中区千田町一丁目9番6号 1)広島赤十字・原爆病院呼吸器科 2)呉市医師会病院内科
肺癌患者17例に対しCDDP,VP-16の標準化学療法後の骨髄回復期にG-CSFを併用してのべ57回のアフェレーシスを行い各症例で末梢血幹細胞(PBSC)を採取した.至適採取時期を決定するための指標を求めてPBSC採取当日の末梢血所見と得られたPBSCの関連を中心に検討した.上記の標準化学療法によって十分量のPBSC採取が可能であったが,採取効率は50歳未満の若年者群が50歳以上の群に比べて良好であった.PBSC採取当日の末梢血白血球数が10,000/μl以上,または末梢血血小板数100,000/μl以上,あるいは末梢血幼若顆粒球10%以上の際にPBSCの採取量は有意に高値であったことからPBSC採取至適時期は採取当日の末梢血白血球数,末梢血血小板数,末梢血幼若顆粒球の出現状況を組み合わせて総合的に検討することにより十分推定可能であると考えられた.特に末梢血幼若顆粒球の出現は有用な指標で,出現から数日間が至適採取時期の可能性が高かった.
末梢血幹細胞 肺癌 幹細胞動員 幹細胞採取時期 造血幹細胞移植
Received 平成8年12月16日
日呼吸会誌, 36(3): 224-230, 1998