ラット気管におけるアデノシン受容体刺激薬の血管透過性に対する影響について
〒162-0054 新宿区河田町8-1 東京女子医科大学第1内科
ラット気管の血管透過性に対するアデノシン及び各種受容体刺激薬の効果をin vivoで検討した.血管透過性は血管外に漏出したEvans blueの吸光度を測定することにより評価した.A3受容体刺激薬であるN6-2-(4-aminophenyl)ethyladenosine(APNEA)の吸入は気道の血管透過性を濃度依存的に増強させたが,アデノシンとA1・A2受容体刺激薬である[R]-N6-[1-Methyl-2-phenylethyl]adenosine(R-PIA),5'-(N-ethyl-carboxamide)adenosine(NECA)は無効であった.カプサイシン吸入による血管透過性亢進はアデノシン,R-PIA,APNEAの前投与による影響を受けなかった.NECAの前投与はカプサイシン吸入による血管透過性亢進を用量依存的に抑制したが,サブスタンスP吸入による透過性亢進には無効であった.したがって,A3受容体を介した血管透過性亢進作用と,A2受容体を介したタキキニン遊離抑制に基づく神経原性炎症の制御が示唆され,気道炎症におけるアデノシン受容体の関与が推察された.
Received 平成9年5月27日
日呼吸会誌, 36(3): 231-235, 1998