慢性閉塞性肺疾患患者における運動時呼吸困難感を規定する肺機能の因子に関する分析
大賀 栄次郎1) 寺本 信嗣1) 松瀬 健1) 片山 弘文1) 富田 哲治1) 鈴木 正史1) 松井 弘稔1) 長瀬 隆英1) 福地 義之助2) 大内 尉義1)
〒113-0033 文京区本郷731 1)東京大学老年病学教室 2)順天堂大学呼吸器内科
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者48名について,安静時肺機能検査,呼吸筋力測定をおこなった.運動時呼吸困難感は自覚的最大負荷まで運動負荷試験を行いボルグスケール(BS)で評価した.さらに,BSとVo2の直線回帰分析を行って,呼吸困難閾値(TLD),呼吸困難増加の度合(BS Slope(BSS))を定量化し,この呼吸困難指標と呼吸機能成績との関連性を検討した.TLDは,FEV1,V25,RV/TLC(%),PImaxと有意の一次相関を認めたが,多変量解析の結果そのうちFEV1,FRCが独立した予測因子であった.BSSは,DLCO,RV/TLC(%),VC,FEV1,PImaxなどと有意の相関を認めたが,そのうちRV/TLC(%)のみが独立した予測因子であった.COPDにおけるTLDの低下は,気道閉塞の悪化に基づくと推測され,BSSの上昇は,残気率の増加にみられるair trappingの増大が影響する可能性が示唆された.
慢性閉塞性肺疾患 安静時肺機能 呼吸筋力 運動時呼吸困難感 ボルグスケール
Received 平成9年8月25日
日呼吸会誌, 36(3): 241-245, 1998