病初期の自然寛解が示唆され,後に確定診断されたWegener肉芽腫症の1例
柳川 崇1) 安藤 常浩1) 生島 壮一郎1) 秋山 修1) 折津 愈1) 武村 民子2)
〒150-0012 東京都渋谷区広尾4-1-22 日本赤十字社医療センター 1)呼吸器内科 2)同 病理部
症例は80歳,女性.発熱,咳嗽,胸部レ線異常のため1995年10月入院した.血沈促進,CRP上昇あり,胸部レ線上多発性に空洞陰影を認めた.肺クリプトコッカス症等を疑い精査したが確診は得られなかった.13日間の抗生物質点滴以外は無治療で胸部レ線像,炎症所見はほぼ正常化し12月16日退院した.2カ月後の96年2月中旬右頬部激痛があり,耳鼻科にて右上顎洞の手術を行なったが,術後39℃台の発熱が持続した.胸部レ線上,両側に空洞を伴う陰影が出現,増悪傾向を示し,更に血沈促進,CRP上昇,c-ANCA軽度上昇を認めた.抗生剤,抗真菌剤が無効であり,4月11日経皮肺生検を行ない,上顎洞の手術材料と併せてWegener肉芽腫症(WG)と診断.ST合剤の後,サイクロフォスファマイドとプレドニゾロンの併用を行ない寛解した.WGにおいて抗生剤のみ又は無治療での著明改善例は報告に乏しく,貴重と思われたので報告した.
Received 平成9年3月19日
日呼吸会誌, 36(3): 256-261, 1998