空腸転移による腸重積と胃転移を生じた非小細胞肺癌の1例
〒750-8520 下関市向洋町1-13-1 1)下関市立中央病院呼吸器外科 2)呼吸器内科
肺癌が小腸に転移し腸閉塞を生じた報告は散見されるが,転移が小腸および胃に生じる例は珍しい.症例は45歳・男性.左中肺野に陰影があり,喀痰細胞診で腺癌と診断された.肺癌はT4N2M0と判定され,化学放射線療法が行われた.その後腸閉塞が発症し,空腸の閉塞病変と胃の転移病変が発見された.開腹所見では2個の空腸腫瘍が5筒性に腸重積しており,離れた小腸間膜に腫大したリンパ節があった.空腸と胃の腫瘍は病理学的に転移性の大細胞癌と診断された.肺癌の小腸転移による腸重積が特異な型であり,さらに胃転移を伴った点で貴重な症例と考え,報告する.
Received 平成9年4月30日
日呼吸会誌, 36(3): 268-272, 1998