血清及び気管支肺胞洗浄液中のCA19-9が著明な高値を示した特発性間質性肺炎の1例
山本 光信 井川 克利 龍河 敏行* 山崎 章* 佐々木 孝夫*
〒680-0017 鳥取市尚徳町117 鳥取赤十字病院内科 *鳥取大学第3内科
症例は84歳の男性で呼吸苦を主訴に来院.画像上両肺にびまん性に広がる蜂窩肺を認め,厚生省研究班の診断基準に従い,特発性間質性肺炎(慢性型,定型例)と診断した.血清中のCA19-9が2,400U/mlと著明な高値を示したため,悪性腫瘍の合併を疑い精査するも異常なく,肺由来の可能性を考え検討したところ,気管支肺胞洗浄液中のCA19-9が5,700U/mlと著明な高値を示し,さらに経気管支肺生検により採取した肺組織の免疫組織染色で,CA19-9の存在を認めた.したがって,肺でのCA19-9の産生が亢進し,さらにそれの血中への流出によって血清中CA19-9が高値を示したものと考えられる.本例のような非腫瘍性肺疾患において,肺由来で血中CA19-9が高値を示す場合がある事を認識する必要がある.
CA19-9 特発性間質性肺炎 気管支肺胞洗浄 免疫組織染色
Received 平成9年5月6日
日呼吸会誌, 36(3): 273-277, 1998