カリニ肺炎に気腫性病変を伴った後天性免疫不全症候群の1例
田坂 定智 高木 英恵 小熊 剛 青木 琢也 副島 研造 金沢 実 山口 佳寿博
〒160-0016 東京都新宿区信濃町35 慶應義塾大学医学部内科学教室
症例は60歳,男性.3カ月来の咳嗽と胸部異常陰影,低酸素血症のため当科を紹介された.気管支肺胞洗浄液からカリニ原虫を検出し,カリニ肺炎と診断した.末梢血CD4陽性リンパ球の減少,抗HIV抗体陽性から後天性免疫不全症候群(AIDS)と診断した.胸部CTでは浸潤影に加えて気腫性変化を認めた.ST合剤,ペンタミジンの投与により胸部浸潤影および血液ガス所見は改善したが,気腫性変化は残存した.気腫性変化はカリニ肺炎発症前の胸部CTで軽度に認めたが,発症後,急激に増悪しており,本症に関連したものと考えられた.カリニ肺炎ではスリガラス状陰影,浸潤影などが典型的とされているが,近年とくにAIDS症例で非典型的な陰影を呈することが報告されている.気腫性変化もその一つで,HIV自体の影響やHIV感染マクロファージによる肺実質の破壊などの可能性が指摘されている.本邦では気腫性変化を呈した症例の報告はなく,貴重な一例と考えた.
後天性免疫不全症候群 カリニ肺炎 高分解能CT 気腫性変化 光線過敏症
Received 平成9年7月7日
日呼吸会誌, 36(3): 283-287, 1998