末梢血幹細胞移植併用大量化学療法が著効した浸潤型胸腺腫(stage IVa)の1例
岩崎 吉伸1) 久保田 豊1) 横村 一郎1) 上田 幹雄1) 橋本 進一1) 有本 太一郎1) 稲葉 亨1) 島崎 千尋1) 中川 雅夫1) 戸田 省吾2)
〒602-0841 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465 1)京都府立医科大学第2内科 2)同 第2外科
症例は42歳,男性.胸痛を主訴に受診.胸部CTにて前縦隔に巨大腫瘤を認め,手術を施行したが,周囲臓器,血管への広汎な浸潤,播種のため試験開胸に終わった.生検組織よりIVa期の浸潤型胸腺腫と診断し,以後,adriamycin,cisplatin,vincristine,cyclophosfamideによるADOC療法を2コース施行し,high-dose etoposide,G-CSFにより幹細胞を採取した.さらにADOC療法を2コース施行後,末梢血幹細胞移植(PBSCT)下にifosfamide,carboplatin,etoposideよる大量化学療法(high-dose ICE)を施行し,胸部CTにて腫瘍は著明に縮小した.その後の再手術では残存病巣は肉眼的に瘢痕化し,組織学的にも腫瘍細胞の残存のないことが確認された.術後50Gyを照射し,治療を終了した.ADOC療法,放射線治療,外科治療にPBSCT下のhigh-dose ICEを組み合わせた集学的治療はIII期,IV期胸腺腫の有用な治療法と考えられる.
Received 平成9年7月24日
日呼吸会誌, 36(3): 288-293, 1998