菌球型より侵襲型へ進展し,イトラコナゾールが奏功した肺アスペルギルス症の1例
〒869-0524 熊本県下益城郡松橋町豊福2338 国立療養所熊本南病院内科
症例は65歳,男性.湿性咳嗽,血痰で当科入院となった.胸部X線で両上肺野に陳旧性肺結核の像と左上肺野に菌球像を認めた.強い炎症反応と膿性痰を認め,喀痰より持続してAspergillus nigerのみが分離された.菌球周囲より浸潤影が出現し,血清アスペルギルス抗原が陽性のため,菌球型より侵襲型へと進展した肺アスペルギルス症と診断した.fluconazoleで治療開始したが,軽快なく,胸部X線像の増悪を認めたため,amphotericin-Bの経静脈的投与を開始したが重篤な低カリウム血症のため中止.itraconazoleの内服投与で自覚症状,炎症反応,胸部X線ともに軽快していった. 組織侵入型肺アスペルギルス症でitraconazoleが有効であった報告は本邦では少なく,貴重な症例であると考えられた.
アスペルギローマ 侵襲性肺アスペルギルス症 イトラコナゾール
Received 平成9年7月25日
日呼吸会誌, 36(3): 294-298, 1998