肺局所の細胞からのサイトカイン産生能を測定し得た原発性肺クリプトコッカス症の1例
阿部 航 良永 倫子 石松 祐二 岩下 徹二 松原 祐一 前崎 繁文 朝野 和典 門田 淳一 河野 茂
〒852-8102 長崎市坂本1-7-1 長崎大学医学部第2内科
29歳の女性,検診にて胸部異常影を指摘されて,精査・加療目的にて1996年7月2日当科に入院した.胸部X線写真上右下肺野に散在する1cm大の結節影を認めた.気管支鏡検査にて右B8より経気管支的肺生検(TBLB)と気管支肺胞洗浄(BAL)を施行した.BAL液中に肺胞マクロファージによる酵母様真菌の貪食像がみられ,培養にてCryptococcus neoformansと同定された.BAL液中の細胞より産生されたサイトカインでは,Interferon(IFN)-γやInterleukin(IL)-10が治療前に高値を示し,治療後に減少を認めた.IL-2やIL-4は変化がなく,特にIL-4は測定感度以下であった.肺局所における感染成立にIFN-γやIL-10が重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
Received 平成9年7月31日
日呼吸会誌, 36(3): 299-305, 1998