溺水により多量の海水と土砂を吸引した1例
干野 英明1)* 渡辺 英明1) 斉藤 安弘1) 澁谷 由江1) 小場 弘之2) 阿部 庄作2)
〒040-0056 函館市弥生町2-33 1)市立函館病院呼吸器科 2)札幌医科大学第3内科 〒060-0061 札幌市中央区南1条西13丁目 *現 北海道恵愛会南一条病院呼吸器科
症例は46歳男性.平成5年7月12日の北海道南西沖地震の際,避難中津波に流され,翌日当院に搬入された.入院時より砂粒を含む喀痰を多量に喀出し,著明な低酸素血症を認めたため人工呼吸管理となった.入院時の胸部X線写真上,両肺びまん性に浸潤影及び小粒状影を認めた.入院4日後の胸部CT像では,経気道散布性の小粒状影をほぼ全肺野に認める他,浸潤影及び不整形陰影を認めた.抗生物質等の投与及び気管内洗浄を繰り返し行い,砂粒を含む喀痰は入院2週間後には消失した.胸部X線写真,血液所見も徐々に改善し,約2カ月半後に退院となった.退院4カ月後の胸部CTでは,小粒状影は残存しているものの著明に改善し,病変の器質化に伴う結節影や線状影が認められた.災害により海水あるいは土砂を吸引した症例に関する画像所見の報告は少なく,特にCT所見の報告は稀と思われる.
Received 平成9年8月11日
日呼吸会誌, 36(3): 306-310, 1998