多数の小気腔が主体となった腫瘤型細気管支肺胞型肺癌の1例
斎藤 博之1) 西堀 武明1) 佐藤 和弘1) 江部 達夫1) 富樫 賢一2)
〒940-2085 新潟県長岡市寺島町297-1 長岡赤十字病院呼吸器科
67歳男性.平成7年1月に検診で右S2に3cm大の非常に淡い腫瘤影を指摘され精査目的で入院.同陰影は平成2年よりみられ,胸部CTでは0.5mm~10mm程の小気腔の集簇としてみられた.この時には確診に至らず経過観察.約18カ月後の平成8年6月,陰影の明かな増大が確認され悪性腫瘍を疑い手術施行.病理組織学的に細気管支肺胞型肺癌と診断された.癌細胞は腫瘤辺縁部に肺胞構造を保ち,肺胞壁を這うように存在していたのみで,中心部は大小様々な気腔と大部分膠原線維によって置き替えられた間質により構成されていた.比較的大きな気腔の大部分は線毛円柱上皮で,小さい気腔はII型肺胞細胞によりその内腔が覆われていた.これらの所見より,本例の腫瘤内気腔の主体は中心部線維化により生じた拡張した細気管支で,一部に腺上皮化生を伴い含気を保った肺胞腔由来の気腔が加わっている所見と考えた.この中心部線維化は本例の画像所見に強く関与していた.
細気管支肺胞型肺癌 中心部線維化巣 細気管支拡張 腺上皮化生
Received 平成9年6月25日
日呼吸会誌, 36(3): 311-315, 1998