慢性肺気腫のlung volume reduction surgery後における運動耐容能改善のメカニズム
松沢 幸範 久保 恵嗣 藤本 圭作 江田 清一郎 花岡 正幸 山崎 善隆 小林 俊夫 関口 守衛 矢満田 健* 羽生田 正行*
〒390-0802 長野県松本市旭3-1-1 信州大学医学部第1内科 *信州大学医学部第2外科
慢性肺気腫に対するlung volume reduction surgery(LVRS)の運動耐容能に及ぼす短期的効果とそのメカニズムを検討する目的で,胸骨正中切開法によるLVRSを受けた7例を対象に,手術前と術後3~5カ月に6分間歩行試験を行い,肺機能検査の改善度との関連性を検討した.LVRSにより,7例中6例で歩行距離の増加を認め,平均で299±42(SE)から359±45mへと20%増加した.歩行時の酸素飽和度低下や脈拍数増加は増強したが,呼吸困難感は低下傾向を示した.歩行距離の改善度は,1秒量,機能的残気量,最大換気量などの閉塞性換気障害の改善度と有意な正相関を認めたが,肺ガス交換指標(CO肺拡散能,動脈血酸素分圧)の改善度との間に相関を認めなかった.以上の結果は,LVRSによる肺や胸郭のメカニクスの改善が換気制限を軽減させ,運動耐容能の改善をもたらすとする仮説を支持する結果と考えられた.
慢性肺気腫 肺気量減量術 運動耐容能 6分間歩行試験 肺機能検査
Received 平成9年6月2日
日呼吸会誌, 36(4): 323-329, 1998