手術例から見たアレルギー性気管支肺アスペルギルス症・真菌症の病理形態学的研究
蛇沢 晶1) 田村 厚久2) 倉島 篤行2) 大林 千穂3) 三俣 昌子4) 前多 松喜5) 斎木 茂樹6) 小松 彦太郎7) 米田 良蔵8)
〒204-8585 東京都清瀬市竹丘3-1-1 1)国立療養所東京病院臨床検査科・臨床研究部 2)同 呼吸器内科 3)兵庫県立加古川病院病理 4)山梨医科大学第1病理学教室 5)豊橋市民病院臨床検査科病理 6)聖路加国際病院病理学科 7)国立療養所東京病院臨床研究部 現 国立療養所栗生楽泉園 8)国立療養所東京病院臨床研究部
Boskenらの形態学的診断基準に合致したアレルギー性気管支肺アスペルギルス症・真菌症の手術例5例を,主として病理の側面から検討した.著しい好酸球を伴う硬い気管支内粘液栓子が全例に確認された.これにより気管支は限局性に拡張し,中心性気管支拡張像を呈していた.その末梢領域に気管支中心性肉芽腫症(4例)および黄色肉芽腫様病変(3例),好酸球性肺炎(2例),器質化肺炎(3例)などが見られた.粘液栓子・末梢病変の内部にはともに,特徴的な変性好酸球塊と真菌が見られ,末梢病変は粘液栓子から散布された真菌により引き起こされた二次的病変と考えられた.以上より,本疾患の一義的な病変は粘液栓子と結論づけられた.診断に際して粘液栓子の重要性を再認識すべきである.また従来,本疾患はアレルギーの側面が強調されてきたが,粘液栓子を主たる増殖巣とするアスペルギルス感染症として捉え直すことも必要と思われた.
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 アレルギー性気管支肺真菌症 病理形態 粘液栓子
Received 平成9年6月12日
日呼吸会誌, 36(4): 330-337, 1998