加速度計による咳嗽の定量的診断法
〒105-0003 東京都港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学内科4 同 内科4 *同 ME研究室
咳嗽時,体表面に発生する特有な加速度を計測し,これにより咳嗽の頻度や強度など定量的診断の可能性を検討する.当院外来通院中の呼吸器疾患患者27名に対し,航空機内の騒音下における確実な音声伝達のための装置を用いて咳嗽を測定した.骨伝導により音声を伝達するシステムのなかで,骨の振動を加速度波形に変換する加速度センサーを体表面に貼付し,咳嗽時に発生する胸壁運動の加速度波形を電圧の変化として捉えた.歩行などの衝撃による加速度を除外するために安静臥床のみで検査を行なった.会話や笑い声などでは,ほとんど胸壁運動の加速度波形は発生しなかった.しかし咳嗽時のみにおいて特徴的な加速度波形が認められた.音声入力などを用いた測定法では咳嗽とそれ以外の成分との鑑別は困難であるが,胸壁の加速度の波形の上では,明確に鑑別することが可能となった.今後,症例を積み重ね更に診断的価値を高めようと考えている.
Received 平成9年9月29日
日呼吸会誌, 36(4): 343-346, 1998