パラコートのハウス内散布により肝・腎障害を初発とし呼吸不全を来して死亡した1例
岸本 卓巳1) 藤岡 英樹1) 山鳥 一郎2) 小崎 晋司1) 大家 政志1) 河端 美則3)
〒702-8055 岡山市築港緑町1丁目10番25号 1)岡山労災病院内科 〒700-0807 岡山市南方2丁目13番1号 2)国立岡山病院臨床検査科 〒360-0105 埼玉県大里郡江南町板井1696 3)埼玉県立小原循環器病センター検査部
パラコート散布による中毒症例の報告は未だない.今回我々はビニールハウス内でパラコート散布中に肝・腎機能障害の繰り返しと肺障害を発症し,2カ月後に呼吸不全により死亡した症例を経験した.本症例の胸部レ線・CT像はパラコートによる肺障害の経過に一致しており,剖検時の肺組織像はパラコート中毒に合致するものであった.本例のようにビニールハウス内でパラコートを散布することでも進行性の肺障害を発症し死亡する危険性があるので,ハウス内でのパラコート散布についても十分な指導が必要であると考えられた.
Received 平成9年5月22日
日呼吸会誌, 36(4): 347-352, 1998