孤立性末梢性肺動脈瘤の2例
稲葉 浩久1) 太田 伸一郎1) 西村 俊彦1) 高持 一矢1) 石田 格1) 江藤 尚2) 本多 淳郎2) 室 博之3) 長島 康之4)
〒420-0881 静岡市北安東4-27-1 1)静岡県立総合病院呼吸器外科 2)同 呼吸器科 3)同 病理検査科 〒420-0911 静岡市瀬名4629-1 4)瀬名病院呼吸器外科
症例1は83歳,男性.再発性心筋梗塞にて加療するも多臓器不全にて死亡.死亡2日前には原因不明の喀血をみた.病理解剖にて,右肺動脈A3に破裂した径1.5cmの瘤を認めた.症例2は75歳,男性.右胸部異常陰影にて当院紹介.肺動脈造影にて,右A1に径3cmの瘤を認めた.高度の肺気腫を合併しているため手術をせず経過観察とし,4年後に脳梗塞にて死亡.死亡時まで,瘤の増大も喀血もみられなかった.成因については,(1)症例1では血清梅毒反応は陽性だが,瘤の病理組織検査にて特異的炎症像や炎症性細胞浸潤は認めず,症例2では先立つ炎症所見や炎症性疾患の合併を認めなかった,(2)症例1では二次性肺高血圧症が出現してから喀血をきたすまでわずか3日と短く,症例2では肺高血圧症は認めなかった,(3)両症例とも外傷の既往はなかったことより,症例2は特発性と考えられ,また症例1も特発性の可能性が高いと考えられた.
Received 平成9年8月12日
日呼吸会誌, 36(4): 384-388, 1998