日本呼吸器学会誌：亜鉛フューム吸入により化学性肺臓炎をおこした溶接工の1例

Vol.36 No.4 目次

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症　例

亜鉛フューム吸入により化学性肺臓炎をおこした溶接工の1例

戸島　洋一^1）安藤　拓志^1）岸川　博文^3）徳留　隆博^2）

〒143-0013　東京都大田区大森南4-13-21 ^1）東京労災病院呼吸器内科 ^2）同　臨床病理科 ^3）産業医科大学第1内科

要旨

症例は32年間の溶接工職歴を持つ61歳の男性．亜鉛メッキ鋼材を溶接中煙を吸入し，その後倦怠感，咳，呼吸困難が続くため受診．炎症反応の亢進，低酸素血症，胸部単純写真で全肺野に粒状影，線状影を認め入院となった．胸部HRCTでは粒状影，分岐線状影を認め，病変の主座として細気管支が疑われた．気管支肺胞洗浄ではリンパ球の軽度増加，経気管支肺生検では気管支上皮，マクロファージへの鉄の沈着，胞隔の軽度肥厚，肺胞腔内へのフィブリン，好中球の滲出が認められた．入院後炎症反応は速やかに改善，低酸素血症および肺活量は徐々に改善したが，肺機能上閉塞性障害は残存した．画像上粒状影，線状影はほぼ消失した．溶接作業に伴う肺障害は吸入物質の種類，量によって多様であり，本例は慢性的なsiderosisに，亜鉛フューム吸入による急性の化学性肺臓炎を合併したものと考えられた．亜鉛フュームはフューム熱の原因として知られているが，職業上の吸入による化学性肺臓炎の報告は少ない．

キーワード

化学性肺臓炎亜鉛フューム溶接細気管支炎呼吸不全

Received 平成9年8月21日

日呼吸会誌, 36(4): 394-398, 1998

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