原発性肺クリプトコッカス症の検討―特に検診等で発見された無症候例に関して―
西田 有紀 千場 博 瀬戸 貴司 瀬戸 眞由美 深井 祐治 蔵野 良一*
〒860-0811 熊本市本荘5-16-10 熊本地域医療センター呼吸器科 *同 病理部
原発性肺クリプトコッカス症は比較的まれであるとされていたが,最近は報告例も増加の傾向にある.我々は検診等で発見された原発性肺クリプトコッカス症12例を経験したので,考察を加え報告する.年齢は27~58歳,男性11例,女性1例で,有症状例は3例,無症状例が9例(75%)を占めた.X線病型は,有症状例中,2例は空洞を有する腫瘤影,1例は両側肺に及ぶ肺炎型であった.無症状例は全例が結節影を呈し,長径1.0~2.8cmと小さく,画像上肺癌との鑑別は困難であった.3例が経気管支的生検,9例が経皮的針生検により診断がなされた.全例,鳥類の飼育歴はなく,1例のみが糖尿病を有したが,他は悪性腫瘍その他の免疫低下状態ではなかった.抗真菌剤の投与で10例では陰影の消失または著明な縮少が得られた.本症は自覚症状を欠くことが多く,迅速かつ的確な診断が必要であり,特に肺癌との鑑別が重要になると思われた.
原発性肺クリプトコッカス症 内科的治療 経気管支的肺生検 経皮的針生検
Received 平成10年12月2日
日呼吸会誌, 37(8): 614-618, 1999